世界は数学で満ちている『世界を変えた17の方程式』
数と数の関係性を明らかにして、数の意味を理解したり別の数を計算する。それが方程式の役割で、鍵となるのは = で表す等号だ。数学は記号を使った言語であり、すべて言葉に翻訳できる。方程式であれば「〜と〜は」という主語で始まり、「等しい」という述語で終わる。
例えばアインシュタインの方程式「E=mc²」は、「物体のエネルギーは、その質量と、光の速さの2乗との積に等しい」と言葉で説明できる。ピタゴラスの定理「a²+b²=c²」なら、「直角三角形の斜辺の2乗は、隣り合った2つの辺の2乗の和に等しい」といった具合だ。
方程式には世界を変える力がある。自然の中に隠れているパターンを発見すると、科学技術のレベルが大きく飛躍する。それをドラマチックに丁寧に教えてくれるのが、数学者イアン・スチュアートによる『世界を変えた17の方程式』だ。
第2章 手順を短くする 対数
- ネイピアは、数を足すことが数を掛ける代わりになることを突き止めた。天体現象の効率的な計算、計算尺、放射性崩壊の解明、知覚の物理学に発展した。
第3章 消えゆく量の亡霊 微積分
第4章 世界の体系 ニュートンの重力の法則
第5章 理想世界の兆し マイナス1の平方根
第6章 結び目をめぐる騒ぎ オイラーの多面体の公式
第7章 偶然のパターン 正規分布
第8章 良い振動 波動方程式
第9章 さざ波とパルス フーリエ変換
第11章 エーテルのなかの波 マクスウェル方程式
- マクスウェルは、電場の回転がその回転面と垂直方向に磁場を作り、磁場の回転がその回転面と垂直方向・逆向きに電場を作る事を発見した。ラジオ、レーダー、テレビ、コンピュータ機器のワイヤレス接続、および現代の通信の大部分が誕生した。
第12章 法則と無秩序 熱力学の第2法則
第13章 絶対であるのは1つだけ 相対論
第14章 量子の不気味さ シュレディンガー方程式
第15章 暗号、通信、コンピュータ 情報理論
第16章 自然のアンバランス カオス理論
第17章 ミダスの数式 ブラック=ショールズ方程式
- ブラックとショールズは、金融派生商品の価格が時間とともにどのように変化するか明らかにした。それにより金融部門が大きく成長し、経済が大きく繁栄した末に、経済恐慌、1990年代の株式市場の混乱、2008年から2009年までの金融危機、それに続く経済不況が起こった。
最も興奮したのは、第4章に登場する日本の宇宙探査機「ひてん」の話。月の測量を終えて燃料がほとんど尽きていたにもかかわらず、方程式を使って最も効率の良い軌道を設計し直し、延命したそうだ。
方程式には負の側面もある。方程式をもとに核爆弾が開発され、経済の金融危機が起こった。だが、方程式がなければテレビやスマートフォン、照明や電子レンジ、車や衛星ナビゲーションなど、今ある製品や技術は存在しない。
『世界を変えた17の方程式』は、私たちの身の回りに方程式が満ちていることを教えてくれる。
➤ 世界を変えた17の方程式(ソフトバンククリエイティブ)Amazon / Kindle / 楽天ブックス / 楽天kobo
関連記事
- 『情報技術の人類史』を読まずして未来を生きるなかれ - #RyoAnnaBlog
- 世界は数学でできている『数学する本能 』 - #RyoAnnaBlog
- 自分の限界を突破するための本 6選 - #RyoAnnaBlog