世界との関わり方が変わる10冊 #2015

今年の夏頃からブログの書き方を変えた。以前は読んだ本を紹介することに重きを置いていたが、いまは本を媒介にして自分の感じたことを書こうとしている。すると自然に、記事のタイトルから本の題名が消えた。

なぜ本を読むのか。それはひらめく準備をするためだ。直接関係がない知識でも、物事の原理を知っていると別の分野で繋がることがある。読んだ直後は役に立たなくても、時間が経つと繋がることがある。

今回は、世界との関わり方が変わる本を紹介したい。人生の特効薬にはならないかもしれないが、読み終えると世界の見方が少し変わるはずだ。

デザイン

上と下の向きが分からないUSBコネクタや、押すのか引くのか分からないドアノブ。認知工学者のドナルド・ノーマンは、このようなエラーをデザインの問題だと指摘する。デザイナーはエラーを想定し、制約を利用してインターフェイスを考えなければならない。プロダクトデザインだけではない。UIやUXはどんな仕事にも関わる話だ。だからこの名著は万人に勧めたい。
デザインの7か条『誰のためのデザイン? 認知科学者のデザイン原論』 - #RyoAnnaBlog


心理

人は自分をコントロールしていると錯覚するが、実際は無意識に行動していることが多い。意識は傍観者だ。脳の病気は愛する家族を傷つけたり、無差別に人を殺害することもある。自分には選択の余地がない行動に対して、人はどこまで責任を追うべきなのだろう。作者のエッジの効いた語り口に、思わず惹きこまれる。
あなたを突き動かすもの『意識は傍観者である』 - #RyoAnnaBlog


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昨年の特集でも池谷教授の本を紹介したが、今年も取り上げたい。本書は教授がニューヨークの高校生に対して講義した内容をまとめたもの。視覚、聴覚、色覚、快感、言語など、意識と脳の関係を豊富な実例で分かりやすく解説してくれる。脳科学の専門家でありながらストーリーテラー。天は二物を与えることがある。誰でも間違いなくハマる一冊。


世の中には知の技法に関する本がたくさんあるが、本書ほど腑に落ちるものはない。自ら問いを発し、その問いをさらに分解して考えるダイナミック発想法。サイドライン、カッコ、注釈、カードなどを使った読書術。そしてユニットで書く文章術まで。本書は知的生産のノウハウが詰まった傑作。本の読み方も変わるはずだ。


数学

数学するのは人間だけではない。アリは非天測位置推測法を使って一直線で巣に戻り、コウモリは高周波の反響定位システムで獲物を捕らえ、フクロウは高さの違う左右の耳で三角測量を行なう。言語を持たない動物は抽象的な数学をしているわけではないが、無意識に計算している。本書を読むと、世界が数学で記述されている事を感じるはずだ。
世界は数学でできている『数学する本能』 - #RyoAnnaBlog


生物

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人間や動物をサイズの観点で比較し、生物に隠されているパターンを解き明かそうとする本。ゾウの寿命は約70年だが、ネズミは約3年。ネズミのほうが儚く感じるが、どちらも心臓の鼓動は20億回で止まる。ネズミの一生は相対的に見れば短いが、成長速度や呼吸間隔など全ての時間が速い。人間を含め、動物の一生とは何かを考えさせられる本。
時間の密度『ゾウの時間 ネズミの時間 ー サイズの生物学』 - #RyoAnnaBlog


ウイルス

自然選択や突然変異だけではない。進化は異種交配やウイルスなどの様々な因子が絡み合って起こる。ウイルスは太古の昔から宿主と共生し、遺伝子レベルで影響を与えあってきた。天然痘ウイルスやハンタウイルスなどの人間を破壊するウイルスも、長い進化の歴史で見ると何かの役割を担っている可能性がある。本書を読むと、ウイルスや細菌を身近に感じるはずだ。
ウイルスと遺伝子の関係を紐解く『破壊する創造者』 - #RyoAnnaBlog


宇宙

1987年2月23日16時35分35秒。岐阜県神岡鉱山にあるカミオカンデは、地球から16万光年離れた大マゼラン雲の超新星爆発を観測した。地下のタンクに純水を満たし、内壁を光電子倍増管で覆ってニュートリノを捉えた。人類が望遠鏡以外で天体を観測した初の瞬間だった。本書はこのニュートリノ観測でノーベル賞を受賞した小柴教授の本。夢を実現するまでの過程を読むとパスツールの名言を思い出す。「幸運の女神は、常に準備している人にのみ微笑む」


科学

物理学者は自然の法則をできるだけシンプルな等式で解明しようとするが、それを実現したのがアインシュタインの「E=mc2」。アインシュタインは原子に秘められたエネルギーを発見すると同時に、パンドラの箱を開いた。本書は「E=mc2」にまつわる数奇な運命を描く。原子や素粒子の教科書としても読めるし、アインシュタインの伝記としても楽しめる傑作だ。
アインシュタインがいない世界 - #RyoAnnaBlog


歴史

2015年11月にパリで同時多発テロが発生した。なぜISILは欧米諸国を憎むのか。ISILは過激なイスラム原理主義者の集まりだが、テロリストはすべて破壊の戦士なのか。立場が違えば自由の戦士になるのではないか。本書はイスラム世界を知る絶好の一冊。テロや戦争で傷ついた子どもを見ると、この本を思い出す。
イスラム世界を学ぶ教科書として - 「テロリスト」がアメリカを憎む理由 - #RyoAnnaBlog


それではまた来年。


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